MちゃんとS上司の恋模様




 あまりの声の大きさに、耳がキーンと鳴っている。
 酔いでフラフラの私には、キツイ仕打ちだ。

 文句の一つでも言おうとしたのだが、須賀主任のあまりの剣幕に苦笑いを浮かべる。

「す、須賀主任ですよね〜? 何を怒っているんですかぁ?」

 まだまだ酔っ払い継続中の私の言葉は舌足らずである。
 それに、どうして須賀主任がこんなに怒っているのか。そもそも、どうして私の携帯に電話をかけてきたのか。理由を知りたい。
 もしかして、残業しなかった私を怒っているのだろうか。
 それに、どうして私の携帯ナンバーを知っていたのだろうと疑問に思う。
 だが、すぐに思い出した。会社に緊急連絡先として報告しているからだ。
 上役なら、申請を出せばしることが出来るので、須賀主任は申請を出したのだろう。

 そんなことはどうでもいい。とりあえず今日の分はキチンと終わらせたのだ。文句を言われる筋合いは全くないはず。
 須賀主任だって外回りの後は直帰だったのだから、仕事の話は明日でいいじゃないか。

 電話口の須賀主任にそう言おうとしたのだが、ひどく心配そうな声色で須賀主任は私の居場所を聞いてきたので口を閉ざした。

『今、どこにいる? 傍に藍沢はいるのか?』
「えっとショッピングモールの〜そこに直結しているホテルの……405号室だったかにゃ。えっと、藍沢さんは帰っちゃいましたよ」
「帰った!?」

 はい〜、とのんきに返事をする私に、須賀主任は言葉をなくしている。

 先ほどまでは怒り狂っていたはずだ。それがなぜか心配され、そして今は言葉をなくしている。
 一体、須賀主任の胸中で何が起こったのだろうか。

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