MちゃんとS上司の恋模様





「藍沢は!?」
「えっと、見ての通りです。帰られましたけど?」
「アイツが何もせずに帰るとはとても思えない。何かあっただろう? 包み隠さず言え」

 私の肩をガッシリと掴み、それはもう直視できないほど、須賀主任は厳しい顔をしている。
 冷や汗が背中を伝うのがわかる。ゴクッと唾を飲み込み、恐る恐る状況を話す。

「言えと言われましても……私、ずっとトイレの住人してましたし」
「は?」

 正直に話したのだが、須賀主任は目を丸くして口を閉ざしてしまう。
 私は小さくため息をつきつつ、スマホを指差した。

「須賀主任、何度か電話かけてきましたよね、たぶん」
「たぶんじゃない、かけたわ! この酔っ払い」

 耳が痛くなるほど大きな声で怒鳴られ、私はピョコンと身体を震わせた。

 だが、こちらにだって言い分はあるのだ。
 ムゥと唇をとがらして、包み隠さず話す。下手に隠しても、この鬼軍曹のことだ。
 根掘り葉掘り聞かれ、最終的にはすべて話してしまうことになるだろう。

 そのとき、嘘をついていたなんてバレた日には……生きていられないかもしれない。
 それなら、さっさと本当のことを話してしまったほうがいい。
 あまり話したくはない内容ではあるのだが……

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