MちゃんとS上司の恋模様



 だって相手は“あの”天使な藍沢さんなのだ。そんなこと言ったら失礼にあたるんじゃないだろうか。
 あの天使、藍沢さんが女に困っているなんてことはあり得ないだろう。

 あれだけの御方だ、女性が黙っているわけがない。
 噂などでは流れていないが、きっと彼女だっているに違いない。

 確実にリア充な藍沢さんが、何が悲しくて私みたいな小娘に手を出すというのか。

 キャハハと笑って、須賀主任の言葉を否定したのだが、彼はますます不機嫌になり、眉間に深い皺を寄せた。

「アイツは誰彼かまわず抱く男で有名なんだぞ」
「し、知らない……嘘でしょ、そんなの」

 否定し続ける私に、須賀主任は真面目な顔をして言い切った。

「それも処女を抱くのが趣味とか公言しているやつだ」
「なっ!」

 そんなの知らない。嘘だ。
 もう一度言おうとしたが、ふと久美さんが言っていたことを思い出した。

『藍沢からはいい噂を聞かないから、気をつけて』

 その言葉を改めて思い返し、須賀主任が言っていることは嘘ではないのだと理解した。


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