MちゃんとS上司の恋模様



「ねぇ、うちのお兄ちゃんってかなりのドSでしょ?」
「うっ……は、はい。学校でもクールドSってあだ名が付いていたぐらいですから」

 やっぱり愛妻に対してもドSぶりは発揮されているのか。典子ちゃんに同情してしまう。
 私は盛大にため息をついたあと、典子ちゃんの方に身を乗り出して聞いた。

「で? どうやってそのドSを手なずけたの?」
「て、て、手なずけたって……」

 典子ちゃんは頬を真っ赤にさせて恥ずかしがったが、私は容赦なく追求する。
 私がこんなに必死なのは、言うまでもない。
 須賀主任攻略のためだ。

 ドSなのに、妙に優しかったり。かといって意地悪な一面も見せたり……

 そういえば帰り際に主任が言っていた言葉を思い出す。
 誰にでも構っているわけじゃない、などと言っていなかっただろうか。

 確かにあれだけ女子社員に人気爆発中の須賀主任だ。
 女性を侍らすことなんてたやすいことだろう。

 だけど、須賀主任は女性たちと一緒にいるところを見たことがない。
 果敢に攻める女子社員たちを、サラリとかわしている印象がある。
 それなのに私にはあれこれ言ってくるし、何より傍にいることが多くはないだろうか。

 今日の残業だって、ずっと私の傍から離れなかったし……

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