MちゃんとS上司の恋模様
そんな訳はない、と否定したあと、「そういえば……」とお兄ちゃんと典子ちゃんが二人でいるときを思い出す。
確かにお兄ちゃんは典子ちゃんに対し、激しく甘い。それはもう、見ているこっちが直視できないほどに甘ったるい。背筋が痒くなるほどだ。
身内のデレデレした顔をみるほど、恥ずかしいものはない。そう思ったことは記憶に新しい。
だけど、あのお兄ちゃんだ。そんなに簡単にS属性を隠すことができるだろうか。
たぶん典子ちゃん以外には相変わらず『クールドS』ぶりを発揮しているとは思う。
そんなお兄ちゃんが、S属性をそんな簡単に典子ちゃんに隠し通せるわけがない。
猫かわいがりしている典子ちゃんに対して、何かしらのSな行為をしているんじゃないかと疑ってしまう。
人間、簡単に性格を変えることができるほど器用じゃないと思うのだ。
私はめげず、典子ちゃんを問い詰める。
「ねぇ、典子ちゃん。あのお兄ちゃんが典子ちゃんにだけS属性を隠しているとは、どうしても思えないのよ」
「と、言いますと?」
典子ちゃんは可愛らしげに小首を傾げて私を見つめてくる。
私は、そんな典子ちゃんの目をまっすぐに見つめた。