MちゃんとS上司の恋模様
口元をひくつかせている私に見せびらかすつもりなのか。お兄ちゃんは典子ちゃんを再びギュッと抱きしめた。
そして典子ちゃんの目尻にチュッと音を立ててキスをする。
全く、我が兄ながら恥ずかしげもなく、よくもまあ……
呆れかえりながら様子をジッと見つめていると、典子ちゃんは顔を真っ赤にさせてお兄ちゃんに抗議をする。
「ちょ、ちょっと。先生!」
私に見られるのが、恥ずかしかったのだろう。
典子ちゃんは頬を真っ赤にさせて、彼女の背後にいるお兄ちゃんを振り返る。
「典子、違うだろう? 僕はもう、君の先生じゃないんだよ?」
確かにお兄ちゃんの言う通りだ。
典子ちゃんは高校はとっくの昔に卒業しているわけだし、お兄ちゃんとは短大に通っている頃からの付き合いだというのだから、先生呼びというのもおかしい気もする。
だけど、典子ちゃんはどうしてもお兄ちゃんのことを「先生」と呼んでしまうらしく、私も彼女の口からお兄ちゃんの名前を聞いたことがないかもしれない。
視線を泳がせモジモジしながら、典子ちゃんは小さく呟く。