MちゃんとS上司の恋模様



 慌ててお兄ちゃんを見ると、視線をフイッと逸らす。これは図星ということか。
 あ然として再び典子ちゃんを見つめると、彼女は頬を赤く染めた。

「真琴さんが言うように、先生はクールドSっていうあだ名が生徒たちの間で付いているぐらいだったんです。確かにその通りだなって最初は私も思っていました」
「う、うん」

 コクコクとリズミカルに頷くと、典子ちゃんは目を細めてほほ笑んだ。

「でも、先生とお話して顔見知りになったときから、なんていうか……意地悪なことを言って私を困らせることも増えたんですけど。でも、それだけじゃなくて」
「それだけじゃない?」
「ええ。優しいことを言ってきたりだとか。先生の性格がわからないって思うことが多かったんですよね」

 ね、先生。と典子ちゃんがお兄ちゃんに聞くと、お兄ちゃんはますます素知らぬふりをする。だが、その頬はほんのりと赤い。

 あのお兄ちゃんが照れている! それもクールドSだと教え子たちに言われている、あのお兄ちゃんが!
 口をぽっかりと開けて呆然としている私に、お兄ちゃんはコホンと咳払いをした。

「話を聞いている限り、手口が一緒だな」
「手口って……」

 口元をひくつかせて笑う私の顔を、お兄ちゃんはため息をつきながら指差してきた。

< 71 / 182 >

この作品をシェア

pagetop