MちゃんとS上司の恋模様





 なんとか昼休憩中にデスクに座ることができた。猛ダッシュで帰ってきたかいがあったというものだ。

 残りあと一分。ギリギリセーフだった。危ない、危ない。
 冷や汗をかきつつ、ふと、須賀主任のデスクを見つめる。

 主任は、いつもこの時間には自分のデスクに戻ってきて仕事をしている。だが、まだ主任は昼休憩から戻ってきていないようだ。どうしたのだろうか。

 須賀主任の動向が気になり、課員たちのスケジュールが書き込まれているホワイトボードを見る。
 どうやら須賀主任は昼から営業に出かけて、そのまま直帰するらしい。

 そこであることにハッと気が付き、思わず顔がにやけてしまう。

(と、言うことは……! 残業なし決定だぁぁぁ!)

 狂喜乱舞したくなる気持ちをグッと抑え、ヨシッと拳を握って喜んだ。

 あれから毎日続いている理不尽な残業が、今日はない。定時に帰ることができるのだ。
 これが浮かれずにいられますか。

 その上、今日は職場の王子こと藍沢さんと約束がある。こんなにハッピーなことが続いていいものだろうか。

 それにしても良かった。今日、残業だと須賀主任に言われたらどうしようかと思っていたところだ。
 正直に事情を話そうか。それともそれなりな嘘の理由をでっちあげて、今日の残業は免除してもらおうか。
 色々考えていたのだが杞憂に終わり、ホッと胸を撫で下ろす。

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