MちゃんとS上司の恋模様
残業はなくなった。そうと決まったら、あとは仕事を頑張るのみだ。
なんとしてでも定時で仕事を終わらせ、藍沢さんとの約束を果たしたい。
ウキウキ気分で午後からの仕事をこなした私は、藍沢さんの指定する時間には会社を出ることができた。
ソワソワして待つこと五分。爽やかな笑顔を浮かべ、手を振りながら私に駆け寄ってくる藍沢さんが見えた。
(ああ、やっぱり天使。ステキすぎる……!!)
藍沢さんは私より年上だ。そんな男性に天使と言うのはどうかとも思うのだが、本当に天使のように周りの人々のすさんだ心を浄化してくれる藍沢さんは、やっぱり天使のような御方だ。
とてもうちのS上司と同期だとは思えない。そして同じ年齢だとは思いたくない。
須賀主任は一度、藍沢さんの爪の垢でも煎じて飲ませてもらうべきだ。
そんなこと本人に言ったら、私の身が危ういので絶対に口にはしないが。
背筋が凍るようなことを想像しているうちに、私の目の前に藍沢さんが辿り着いた。
「ごめんね、麦倉さん。待ったかな?」
「いえ、私も今来たばかりなんですよ」
顔を紅潮させて首を横に振る私に、藍沢さんは再び天使な笑みを浮かべた。
「良かった。じゃあ、行こうか」
「はい!」
元気よすぎる返事をすると、藍沢さんはちょっと驚いた様子で目を丸くしたが、すぐにクスクスと笑い出す。