MちゃんとS上司の恋模様
その声でさえも天使の囁きのように聞こえ、私はもうウットリしてしまう。
私の心は今、藍沢さんの笑い声で浄化されたに違いない。
ここ最近S上司こと、須賀主任の鬼畜攻撃に耐え忍んでいたので、本当に心が洗われる思いがする。
とにかく、だ。今日は残業もない。須賀主任の目もない。
羽を思いっきり伸ばして英気を養わなくては! どうせ、明日には再び須賀主任の鬼軍曹ぶりに項垂れるのだ。
それなら今、つかの間の休息をとってもバチは当たらない。
藍沢さんと肩を並べて歩き、ウキウキ気分で私たちは近くにある百貨店へと行くことにした。
「妹さん、新居の準備は順調に進んでいそうですか?」
藍沢さんの妹さんへの結婚祝いは何が良いだろう。百貨店に入ったはいいが、闇雲に歩き回っていても決まらないだろう。
私は藍沢さんにとりあえず妹さんのことや、どんなものを欲しがっていたかなどを聞いてみることにした。
もしかしたら、すでに色々なお祝いを頂いて揃っているモノなどもあるかもしれない。
なるべくならダブらないようにしたい。同じモノをもらっても、もらった方も贈った方も残念極まりないからだ。
藍沢さんは顎に手を当て、「うーん」と考えこんだ。
「お祝いは徐々にもらっているみたいなことを言っていたかな」
「そうですか。それは友人関係とかですよね?」
「うん、そうだと思うよ」
となると、やっぱり私が選ぶものと被る可能性は高い。さて、どうしようか。
悩んでいる私に、藍沢さんは「そういえば……」と何かを思いだしたように呟いた。