不器用な彼女
社長が近付いた時、フワッと整髪料の香りが漂った。大人の男って感じ。
自然にエスコートできちゃうあたり、女の人に慣れてるのかな?なんて考えたりする。
さっき詩織に触れた社長の右手を見てドキドキしてしまう。
初めて2人きりになり(事務所以外で!)変に意識してしまってるのだろうか?
社長が話し掛けてるのに詩織は見惚れていた。
「おい、聞いてんのか?」
「え?…はい!」
「さっきサンドイッチ食ったけど、まだ腹が減ってるか?って聞いてんだ」
「お酒にツマミ程度で大丈夫です」
「了解」
社長は仕事に厳しく、詩織に厳しく、たまに嫌になる時もあるけれど、意外と面倒見が良いところもあったりする。だからきっと何だかんだ慕っているんだと思う。ちゃんとしたらイケメンだし。
赤信号に捕まって舌打ちする社長の横顔、詩織にとっては古臭いBGM、散らかった後部座席…プライベートを覗き見るような感じがしてワクワクしていた。