不器用な彼女
白い壁にオレンジの屋根。坪庭は綺麗に手入れされていて小さな池の中には魚が泳いでいる。
店の人に案内された半個室の部屋には座り心地の良い鮮やかな赤色のダイニングソファー、飾り棚には豪華な生け花や観葉植物、壁にはお洒落な絵が何枚も飾られていてシャンデリアまでぶら下がってる。

「素敵なレストランだね。…私…もう少しお洒落して来れば良かった」

「同感です」

今日は一美最後の日。バタバタとしていたのと、3人の都合もあり、送別会も一美の旦那様になる人との顔合わせもまとめて今日になってしまった。
詩織と一美は一緒に退社してレストランに先に着く。社長は現場を回ってから少し遅れて来る事になっている。

暑い中、駅から歩いたから冷え冷えのおしぼりが嬉しい。

「こんなお洒落な店なら一言言ってくれても良いのに!社長、気が利かない!…てか、社長、お洒落な店、知ってんのね!…オジサンの癖に…ププッ!」

「オジサンって…社長に怒られますよ?」

「やっぱ、年齢差とか感じる? 食べ物の好みだったり、聴きたい曲が違うとか、肌のツヤとか…?あと、夜の営みとか頻度とか…。社長、淡白な感じするんだけど?」

こんなとこまで来て下ネタは遠慮したい。
社長は年上だし、大人だし、余裕もタップリで頼れる。でも、二人きりの時は甘えっ子だったり、ハンバーグが大好きだったり子供っぽいところもある。セックスはどちらかと言えばしつこくて回数も「勘弁して〜!」と言いたくなるくらいだ。絶倫?てやつ?

「まぁ、普通の男の人だと思いますけど。。。」

当たり障りなく答えておこう。根掘り葉堀り聞かれるのも嫌だし。

「普通って何が? セックスが?それともサイズ???」

「ええっ?!何言ってるんですか!」

「コホン!」と聞こえる咳払い。
やっぱりそこには社長が居た。


「木村、詩織を困らせんな、ドアホ。あと、オッサン扱いすんな」

「あ、社長!お疲れ様でーす」

一美に悪びれた様子は無い。本当にただの興味本位なんだろう。
一美は舌をペロッと出して笑って誤魔化した。


「あ、彼、来たみたい」

一美は丁度鳴った携帯に助けられ店の外まで彼を迎えに出た。



「普通って…後でゆっくり聞かせてもらうからな?」

自分から振った話でもないし、適当にあしらったつもりの答えが社長の機嫌を損ねたらしい。
社長の顔には怒りマークが見えた。
とんだトバッチリだ!












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