不器用な彼女
海が見えるチャペル。 招待客は60名程だ。

鳴り響くオルガンと賛美歌、牧師の前には緊張の面持ちの新郎。

まだかまだかと新婦の登場を待つ。


「新郎、ガチガチだな」

「…私も緊張してきました」

なんてコソコソと話す。


大きく開かれたドアから熱風と共に新婦の入場。
会場は大きな拍手に包まれた。

「一美先輩…綺麗」

「あぁ、馬子にも衣装だな」

お腹をふんわり隠す純白のウエディングドレスと白い花の冠に白いブーケ。
緊張と言うものは無縁か招待客に笑顔で応えている。

誓いの言葉と指輪の交換を終え、いよいよ誓いのキスだ。

顔を覆うベールが捲られ、一美は顔を上に上げる。新郎は少し腰を折ると一美の大きくなったお腹に手を添えるとそっと唇を落とした。




抜けるような青空に吸い込まれていくカラフルな風船。
二人に注がれる薄紅色の花びら。


笑顔の一美と涙ぐむ新郎の姿が印象的だった。













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