不器用な彼女
披露宴はアットホームな雰囲気だ。
乾杯の音頭はあったものの、仲人も置かず、堅苦しい主賓挨拶もナシで二人の馴れ初めの紹介のスライドショーや友人の余興で賑わっていた。

お色直しで主役が退場した後、詩織は席を外す。

「ちょっとお手洗いに行ってきますね」

「あぁ、具合悪いわけじゃないよな?お前、結構なペースで飲んでるけど?」

「大丈夫です」

今日は嬉しくてお酒が進んでしまう。嬉しさだけではななく、頻繁にビール瓶を持って回ってくる親族の好意をついつい受けてしまうのだ。

トイレを済ませ会場に戻ると新郎新婦は高砂に居て、今度はピンクのドレスを身に纏った一美が見える。
そして社長は…露出の多いパーティードレスを着た女の人4人に囲まれて一緒に写真なんか撮ってる。

今日の社長はいつもにも増してイケメンで男の色気がムンムンだ。そりゃ女の人を引き寄せる訳だ。

満更でもないようで鼻の下なんか伸ばしてる。(ように見える)


詩織は会場脇に並んでいた椅子に腰掛け、丁度通り掛かった給仕からウイスキーのグラスを受け取ると、社長を睨みながらクイクイと飲み干した。



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