不器用な彼女
「何か…ヤダ、その子」

週末、尚美は詩織の部屋に遊びに来ていて、詩織の愚痴に付き合ってくれている。

「私だってヤダよ!」

「でもさ、相変わらず社長とはデートしたり泊まりに行ったりしてるんでしょ?」

「まぁ、それはそうだけど」


茉由が社長に話しかける時の態度、社長に声を掛けられた時の反応、無駄に近い距離、無駄に多いボディータッチ。社長だって悪い気はしてないだろう。多分。

茉由が社長に好意を持ってるのが嫌でも分かる。



「“なんか妬いちゃうな〜”って可愛く社長に伝えてみたら?」

「言えるわけないじゃん!『仕事だろ?』とか『バカか』って言われるに決まってる」

「職場が同じだと…そういうのヤダよね」

「確かに」

仕事を辞める気もないし、社長の側に居たいとも思う。

でも、茉由に気を取られていつもの調子で仕事が進まない。

「いつも堂々と交際宣言していた社長なのに、なんでその子には何も言わないんだろ?」

「わざわざ言う必要はないって思ってるんじゃないかな? その子から告白されたりしたら…きっと言ってくれると思うんだけど」

三人だけの会社で、そのうちの二人が付き合ってるとしたら…何となく居心地悪く感じてしまうのは分からなくもない。それは経験済みだ。結局は詩織の勘違いだったけど、一美と社長の仲を疑った時は本当にキツかった。


尚美に話しても今回ばかりはスッキリせず、また月曜日を迎えた。








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