不器用な彼女
青木が事務所を後にしてすぐ茉由が詩織に話し掛けてくる。

「私、社長の事、狙ってるんです!」

相槌も返事も出来ずに固まる詩織に、茉由は話を続ける。

「格好良いし、優しいし、大人だし、身につけているものだって高級品だし」

「来月、誕生日って言ってたし…何かプレゼントしてみようかと思ってるんです!…何が良いと思います???」


「社長は私と付き合ってるの」と言いたい代わりに、詩織の口から出たのは違う言葉だった。


「社長の誕生日…いつだっけ?」


付き合ってるのに知らなかった。気にもしてなかった自分が急に恥ずかしくなる。
恥ずかしさと同じくらい、ショックと情けなさで心はイッパイだ。

「10月7日って聞いてます」

茉由は「先輩、協力してくださいね!」なんて言って仕事に戻った。



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