不器用な彼女
夜、「疲れた」なんて社長が詩織のアパートを訪ねて来る。ジャージやスニーカーは塗料で汚れていて、おまけに顔にも色がついてる。埃っぽく、汗臭く、こんな姿を見られるのはレアだ。

「何かメシある?」

「先に言ってくれたら用意したのに!てか、先にお風呂行ってください!
ご飯は適当で良ければすぐ作りますから」

「ん、適当で良い。風呂借りるわ」


麻婆豆腐丼に冷凍餃子、玉ねぎたっぷりの中華風玉子スープを手早く作る。

お風呂から上がった社長は「俺のパンツどこ?」なんて丸出しで歩いてる。

「やだ!変態!」

「散々見てるくせに。あ、中華好きだわ〜」

麻婆豆腐の入ったフライパンに顔を近付けて匂いなんて嗅いでる。

やっぱり茉由の事は自分が考えすぎているだけな気がしてくる。社長の詩織に対する態度は何一つ変わってないような気がする。

泊まった時に困らないようにと下着と服を一式預かっていて、詩織はクローゼットから着替えを引っ張り出した。



社長は今日もペロリと完食すると、当たり前のように詩織に擦り寄ってきた。

「で、機嫌は直ったのかよ?」

ソファーに座る詩織を後ろから抱きしめて肩に顔を乗せてくる。今は甘えん坊モードだ。

「社長、ニンニク臭い」

「何だと!お前が餃子焼いたんだろ?」

詩織をソファーに組み伏せると餃子臭いまま沢山のキスを降らせた。










< 147 / 203 >

この作品をシェア

pagetop