不器用な彼女
部屋の中には誰も居ない。
綺麗に整頓されていて、でもマグカップが1つキッキンの水切りカゴに置かれている。
(朝まではここにいたって事か??)
「どうします?捜索願出しますか?でも、貴方は上司ってだけだから…一度親御さんや兄弟に連絡を取ってみましょうかね」
警察官の事務的な対応に苛立ちを覚える。
「緊急連絡先…これはご実家かしら?」
不動産屋は手元の書類をパラパラとめくっている。
「こちらからご実家に連絡してみますよ」
個人情報がどうとかで住所や電話番号は教えて貰えない。
「実家に連絡した後、電話を頂いても宜しいですか?」
「事情によっては詳しくお話しできませんけど?」
その言い草につい言葉を荒げた。
「無事かどうかだけ教えてくれたらいいんだよ!」
椎名の勢いに後退りした不動産屋は肩に掛けていたショルダーバックをチェストにぶつけて、チェストの上にあったアクセサリーボックスを床にぶちまけた。
散らばる指輪やピアス。
「あ、私ったら…ごめんなさい!」
慌ててアクセサリーを搔き集める不動産屋。椎名の足元にまで指輪が転がってきている。
詩織がよく身につけているピンクゴールドの指輪だ。
その隣に、見た事がない白いプラスチックの四角い物も転がっている。
「これは…」
「あ、妊娠判定薬ですね」
「えっ?」
「ん〜、櫻井さん、オメデタみたいですね」
不動産屋が白いプラスチックを覗き込みそんな事を言う。
「ほら、➕がでてますでしょう?」
そんな話、ひとつも聞いてない。
「間違いって事はないですか?」
「無いでしょうね、こんなの、人から貰うものでも無いですし、大事に仕舞ってありましたでしょう? 私も経験者なので、分かりますよ。ま、うちの子は既に巣立ってしまいましたけど」
綺麗に整頓されていて、でもマグカップが1つキッキンの水切りカゴに置かれている。
(朝まではここにいたって事か??)
「どうします?捜索願出しますか?でも、貴方は上司ってだけだから…一度親御さんや兄弟に連絡を取ってみましょうかね」
警察官の事務的な対応に苛立ちを覚える。
「緊急連絡先…これはご実家かしら?」
不動産屋は手元の書類をパラパラとめくっている。
「こちらからご実家に連絡してみますよ」
個人情報がどうとかで住所や電話番号は教えて貰えない。
「実家に連絡した後、電話を頂いても宜しいですか?」
「事情によっては詳しくお話しできませんけど?」
その言い草につい言葉を荒げた。
「無事かどうかだけ教えてくれたらいいんだよ!」
椎名の勢いに後退りした不動産屋は肩に掛けていたショルダーバックをチェストにぶつけて、チェストの上にあったアクセサリーボックスを床にぶちまけた。
散らばる指輪やピアス。
「あ、私ったら…ごめんなさい!」
慌ててアクセサリーを搔き集める不動産屋。椎名の足元にまで指輪が転がってきている。
詩織がよく身につけているピンクゴールドの指輪だ。
その隣に、見た事がない白いプラスチックの四角い物も転がっている。
「これは…」
「あ、妊娠判定薬ですね」
「えっ?」
「ん〜、櫻井さん、オメデタみたいですね」
不動産屋が白いプラスチックを覗き込みそんな事を言う。
「ほら、➕がでてますでしょう?」
そんな話、ひとつも聞いてない。
「間違いって事はないですか?」
「無いでしょうね、こんなの、人から貰うものでも無いですし、大事に仕舞ってありましたでしょう? 私も経験者なので、分かりますよ。ま、うちの子は既に巣立ってしまいましたけど」