不器用な彼女
『今から東京に戻るから、そのままお前のアパートに行く。
これからの事、話さなきゃならないからアパートに帰っててもらえるか?」

「それが…ちょっと…今は無理なんです」

『は?それはないだろ?!』

電話の向こうの社長は明らかに怒っている声だ。

覚悟を決める。ゴクッと喉が鳴った。

「今…病院なんです。あ、両親には内緒にして…」
『ふざけんなよ!!!!』

詩織の言葉を遮るように社長が怒鳴る。

「あ、ちょっと!えっ?詩織?あら?!」

今度は母の声が聞こえる。

「後でまたかけるわ!ちょっと、お父さん!」

電話の向こうで慌てた様子。そのままプツッと電話は切れた。

その日は再び母から電話が掛かってくる事は無かった。



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