不器用な彼女

トイレから戻ると社長の姿は見当たらない。

詩織は席に戻ると、大きな溜息を吐いた。


今日は詩織の誕生日。彼氏なんて何年も居ないけど、誕生日を祝ってくれる友達を待たせている。

実際は待ってないかも?

誕生日会がついでの合コン。きっと今頃お酒も入って盛り上がってるに違いない。
合コンは好きじゃない。でも、お酒は好き。
誕生日に一人寂しく過ごすくらいならと合コン参加を快諾したのに。

結局は残業を命じられ今に至る。
この仕事を終わらせないと帰れない。

目もショボショボ、首も肩もパンパン。

早くおわらせなきゃ!気持ちを切り替えなきゃ!と思っても簡単に切り替わるものではなく、打ち込みの原紙と睨めっこしている。


「クソしたらスッキリしたか?」

いつの間にかデスクの脇に社長が立っている。手には詩織の大好きなカフェの紙袋を持っていた。

鬼の癖に、優しいとこあるじゃない?

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