不器用な彼女

「大丈夫…ゲホッ！…じゃないです！」

「櫻井、エアコンは業者頼むから途中でやめても構わねぇぞ？」


そのやり取りが聞こえたのかミニキッチンから一美が顔だけだしてキーキーと怒っている。

「ちょっとー！換気扇も業者入れてくださいよ！」

「木村はアレルギーじゃねーだろ？ 何ならエアコンも掃除してくれてもいーよ？」

「お断りします！換気扇で手一杯です！」

「櫻井、業者に電話しといて。俺、暇だし髪切ってくるわ」

「私も美容室行きたーい！」

「あ？お前はダメ」

社長は最近マメに床屋に通い爽やかイケメンをキープしている。

社長はサンダルから靴に履き替えると車の鍵をクルクル回しながら事務所を後にした。


「換気扇、壊してやろうかな…」

一美がボソッと呟いた。