不器用な彼女
すぐにタクシーを捕まえ、移動すること15分。
神楽に到着する。

よく手入れされた生垣の切れ間から小径を進み、朱色の引戸をひく。


「いらっしゃいま…あら!詩織チャン!」

さすが人気店のオーナー。一度会った人の顔と名前は忘れていない。

「ご無沙汰してます。カツミさんもお元気そうですね」

相変わらずの色っぽさに詩織がウットリしてしまう。今日は桜色の着物を召している。


カウンター席に腰掛け、尚美を紹介する。

「あ、そうそう、詩織チャン、今日恭介が来てるのよ」

カツミはそう言って奥まった場所にあるテーブル席に目線を送る。


(ドッキーン!本当に居た!!)

あぁ、口から心臓が出そうだ。
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