不器用な彼女
注文したお酒が用意され、カツミが奥に引っ込んだところで尚美が口を開く。

「恭介って？…例の…社長？」

「…うん。…緊張してきた」

「まさか本当に居るとは！笑 イケメン社長、拝まなきゃ！ウフフ！」

「余計な事は言わないでよ？」

「どうかな〜」

社長は中々姿を現さない。

二人揃って自然と聞き耳を立ててしまう。
心地よいジャズのBGMも今は迷惑な音でしかない。

時々聞こえる社長の声と女の人の声。笑い声まで聞こえたりする。社長の相手は誰なのかそればかりが気になってしまう。

「なーに、二人で難しい顔してるの？」

カウンターの向こうでカツミが不思議そうな顔をしている。

「恭介と鉢合わせたらマズイの？」

「いえ、そんな事はないです」

「今日は大事な話をするからって…女の人と一緒に居るわ！ 彼女かしら？ 何かヒソヒソ話しちゃってるのよ。ん〜！妬ける！」

冗談なのか本気なのかカツミはハンカチを噛むポーズをして笑ってる。

詩織は心の中でそのポーズをしていた。

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