不器用な彼女
「…ん?…あ?」
社長が目覚めると同時に、詩織の携帯電話が鳴り響く。
「すいません…」
「出たらいいよ」
社長から少し離れ、通話ボタンを押す。
『詩織ー!まだ終わらないのー?』
スピーカー通話にしていないのに静かな事務所の中に響く声。
相手は本日の主役を祝ってくれる友、山城尚美(やまきなおみ)だ。
「あ、もうちょっと…あと40分くらいで行けると思うんだけど…」
『それがさー、今日のコンパはハズレでさ!もう解散になるとこなの〜!私もう酔っ払ってさ〜もう帰りたいんだけど…でね、あのね〜、、、』
尚美の話を遮るように「会社出たら電話するよ」と口を挟むも相手は聞く耳持たず、電話の向こうでハッピーバースデーの歌なんて歌ってくれてる。
ちょっと迷惑だと思いながら下手くそな歌を聴いてちゃんとお礼を伝えた。