不器用な彼女
「で…何でもやるから力を貸して欲しいって頼まれた。父親の事、親にも隠してるから…やっぱり親にも反対されてて…でも『産みたい』って。『好きな男の子供だから』って。

出産ギリギリまで働くし、出産したらすぐ働くしって、あいつ泣いててさ、凄く必死でさ…


『子供はどうすんだ?』って聞いたら『ベビーカーで連れて出勤してもいいか?』って、
『そんな緩すぎる会社なんてねーだろ?!』って思ったんだけど…あんな風に頼まれたら…

『ベビーカー出勤、良いよ』って言いたくなるし…出来る事は何でもやってやりたくなるじゃん?

お前が辞めたい理由って、木村への特別待遇が気に入らないのかと思ってた。働けない奴に給料出すのかー?って」

「そんな訳ないじゃないですか!
…一美先輩…私にも話してくれたら良かったのに」

「…友達と子作りしちゃったとか、軽蔑されたらって不安もあったらしいけどな。

ま、今度詳しい事は本人に聞けよ?

で、アイツは悪阻の最中でしばらく仕事には来ないって訳」



いつも明るくて冗談ばかり言っている一美に、人に言えない凄い悩みがあって…自分の勘違いがとてもアホらしく思える。


『出来る事は何でもやってやりたくなるじゃん?』なんて男前な事を当たり前に言っちゃう社長にも感激した。

社長は軽率な男なんかじゃなかった!


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