不器用な彼女
「で、何だっけ?

俺は浮気症で軽率なんだっけ?」


社長は意地悪な顔をして嫌な話を蒸し返す。



「ウッ…失言でした」

「あとは?『社長なんか大っ嫌い!』だっけ?」

憎たらしいくらいのドヤ顔だ。


「おい、ハッキリ言えよ」

(恥ずかしい!恥ずかしい!勘弁してー!)



「こっち来いよ」


社長が詩織の手首を掴んで引っ張る。

スポッと抱きしめられた。


背なんか詩織とあまり変わらないのに、ガッシリとした筋肉質な体に男を感じる。

「お前、俺が好きなんだろ? 過去形じゃねーだろ?…大っ嫌いじゃねーだろ?」

その声は少し掠れていて、耳からも体からも伝わってくる。
詩織は返事の代わりに社長の背中に腕を回した。

< 73 / 203 >

この作品をシェア

pagetop