不器用な彼女
18:30。
尚美の仕事終わりに合わせて待ち合わせをする。

待ち合わせをしたのは良いけど、行く直前になって怖気付く。

「やっぱ神楽はやめにしない?」

「今更何言ってんのよ!行くよ!」

「何か探ってるみたいで…」

「それが目的!」

問答無用に尚美は詩織を引きずって、神楽のドアをくぐった。



「あら、いらっしゃい! 今日は早いのね。
さぁ座って座って!」

カツミは今日も綺麗だ。藤色の着物を着ている。

「日替わりで定食も食べられるって聞いたから食べに来ました」

「お邪魔しまーす」

店は18時からやってるけれど店内にはまだお客さんは居ない。カウンター脇の厨房から甘い醤油の香りが漂っている。



< 82 / 203 >

この作品をシェア

pagetop