不器用なフクロウ

部署に戻ると、ちゃんと休憩を取ったのか不明の主任が既にパソコンに向かっていて、菅野さんは自分のデスクでパンをかじっていた。

直人は珍しく自分でコーヒーを淹れていて、窓の外を眺めながらそのコーヒーをすすっていた。

わたしは自分のデスクにつくと、一つ溜め息をつき、作業途中のフォルダを開いた。

「戻りましたー」

そう言って入って来たのはコンビニの袋を手に持った米原くん。

米原くんはニコニコしながら自分のデスクにつくと、コンビニの袋から何かを取り出し、それをわたしに差し出した。

「これ、どうぞ」

米原くんが差し出したのは、わたしが普段よく飲んでいる飲むヨーグルトだった。

「あ、桃味だ」
「新しく出てたので、買ってきました」
「ありがとう」

わたしはそれを受け取ると、有り難くいただくことにした。

期間限定の桃味。
毎年飲んでいるからわかっているけれど、当たり前に美味しい。

米原くんは自分の分も買ってきたようで、それを飲んで「これ美味しいですね!」と言っていた。

そして、「いつも菜月さんが飲んでるの見て、飲んでみたいと思ってたんです」と言って、笑っていた。

可愛い。
米原くんを見て、そう思っている自分がいた。

< 12 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop