不器用なフクロウ

午後は、やらなくてはいけない作業がありすぎて、目まぐるしく時間は過ぎて行った。

定時は17時なのだけれど、やっと作業が終わり、気が付けば19時を回っていた。

直人と米原くんは少し前に退社していて、菅野さんもいつの間にか居なくなっていた。
そして主任はいまだにデスクから動かず、パソコンに打ち込みをしている。

「主任、まだ帰らないんですか?」

わたしが話し掛けると、主任はふと顔を上げ「終わったなら早く帰れよ」と優しく言った。

「わたしも手伝いますよ」
「大丈夫だよ、あと少しで終わるから」
「じゃあ、そのあと少しをもっと早く終わらせましょう?わたし、帰ってもどうせ一人なんで。主任は待ってる人がいるじゃないですか」

わたしがそう言うと、主任は寂しそうに微笑んだ。

その表情にハッとするわたし。
何かいけないことを言ってしまった気がした。

「俺も一人みたいなもんだよ」
「えっ、、、?」
「嫁とは上手くいってないんだ。しばらく、会話らしい会話なんてしてないよ」

ハハッと自分の気持ちを誤魔化すように笑い、主任は言った。

女子社員から人気の主任が、まさか夫婦関係で悩んでいたなんて思いもしなかった。

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