不器用なフクロウ
次の日の朝、軽い二日酔いになっていたわたし。
どうも頭が痛い、というか重い。
お酒を飲むこと自体が久しぶりで、少し飲み過ぎてしまった。
きっと主任も二日酔いになっているに違いない。
いつもの時間のバスに乗り、会社を目指す。
最寄りのバス停で降りると、そこから徒歩5分で会社に到着するという、何とも通勤に便利な場所にある。
あくびを手で隠しながら社内に入ると、コツコツとヒールを鳴らしながら走って来る音が背中から響いてきた。
「おっはよー!」
その声と共にわたしの肩を叩いたのは、商品部の古谷沙智子。
彼女は高校の時の同級生だ。
「あ、沙智子。おはよー」
「なしたの?なんか顔色悪いよ?」
「うん、ちょっとね」
「もしかして二日酔い?」
ニヤッと笑い、沙智子は言った。
「昨日、磯山主任と飲んでたでしょ?」
「なんで知ってるの?」
「わたしも近くのお店で飲んでたから!みんな羨ましがってたよー、磯山主任と2人でお酒飲めるなんて」
そう言って、脇腹を小突いてくる沙智子。
そう言う沙智子も主任のことが気になっていることをわたしは知っている。
「残業のあとだったから、気晴らしにね。主任、最近忙しそうだったからリフレッシュも必要でしょ」
「ふーん。でも奥さんいるんだから、奥さんとリフレッシュすればいいと思うけど?」
沙智子の言葉に何も言い返せないわたし。
普通に考えれば確かにそうなんだけれど、奥さんとリフレッシュ出来ない事情があるだなんて沙智子には言えない。
というか沙智子に限らず、誰にも言えない秘密だ。
エレベーターに乗ると、同じ5階で降りて「じゃあね」と沙智子と別れる。
わたしは部署の部屋のドアをそっと開け、中を覗くようにゆっくりと入って行った。
そこには、既に主任の姿があり、やはり二日酔いなのか顔色が悪かった。