不器用なフクロウ
「おはようございます」
わたしが声を掛けると、主任はゆっくりと顔を上げ、優しく微笑んで「おはよう」と言った。
いつもピシッとしている主任の髪の毛が今日はクシャクシャで、それがとても新鮮に見えた。
「主任も二日酔いですか?」
「朝永もか?」
「はい、ちょっと頭が痛くて。お酒久しぶりだったので、調子に乗っちゃいましたね」
そう言ってわたしが笑うと、主任も「俺もだ」と言って笑った。
「あ、コーヒー淹れますね」
わたしはそう言うと、デスクにバッグを置いてドリンクスペースに向かった。
すると、そこには先客がいた。
「あ、直人。おはよう」
「おう」
そこにはコーヒーを飲む直人が立っていた。
わたしより先に来ているなんて珍しい。
「昨日、主任と飲みに行ったのか?」
「うん」
「主任と2人で行くなんて珍しいな」
「まぁね~」
わたしはそう返事をしながら、コーヒーを2つ淹れた。
そして、わたしが自分の分のコーヒーにミルクを入れようと、ミルクに手を伸ばすと、それを直人が先に手に取った。
「今度は俺とも付き合えよ」
そう言って、直人はわたしにミルクを差し出すと、自分のデスクに戻って行った。
ムッとしたような直人の態度に、怒ってる?と戸惑うわたし。
わたしはミルクを入れてかき混ぜると、主任の分のコーヒーを持ち、主任のデスクに届けた。
「はい、どうぞ」
「いつもありがとう」
わたしはそのまま自分のデスクに戻り、コーヒーを飲んだ。
パソコン越しの直人は、やはり何処と無く不機嫌で、苛ついているように見えた。