不器用なフクロウ

「おはようございます」

わたしが声を掛けると、主任はゆっくりと顔を上げ、優しく微笑んで「おはよう」と言った。

いつもピシッとしている主任の髪の毛が今日はクシャクシャで、それがとても新鮮に見えた。

「主任も二日酔いですか?」
「朝永もか?」
「はい、ちょっと頭が痛くて。お酒久しぶりだったので、調子に乗っちゃいましたね」

そう言ってわたしが笑うと、主任も「俺もだ」と言って笑った。

「あ、コーヒー淹れますね」

わたしはそう言うと、デスクにバッグを置いてドリンクスペースに向かった。
すると、そこには先客がいた。

「あ、直人。おはよう」
「おう」

そこにはコーヒーを飲む直人が立っていた。

わたしより先に来ているなんて珍しい。

「昨日、主任と飲みに行ったのか?」
「うん」
「主任と2人で行くなんて珍しいな」
「まぁね~」

わたしはそう返事をしながら、コーヒーを2つ淹れた。

そして、わたしが自分の分のコーヒーにミルクを入れようと、ミルクに手を伸ばすと、それを直人が先に手に取った。

「今度は俺とも付き合えよ」

そう言って、直人はわたしにミルクを差し出すと、自分のデスクに戻って行った。

ムッとしたような直人の態度に、怒ってる?と戸惑うわたし。

わたしはミルクを入れてかき混ぜると、主任の分のコーヒーを持ち、主任のデスクに届けた。

「はい、どうぞ」
「いつもありがとう」

わたしはそのまま自分のデスクに戻り、コーヒーを飲んだ。

パソコン越しの直人は、やはり何処と無く不機嫌で、苛ついているように見えた。

< 16 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop