不器用なフクロウ
週末、販売促進部と商品部の合同の飲み会が開催された。
商品部に中途入社した人がいるらしく、その歓迎会も兼ねている。
わたしは主任、直人、米原くんと同じテーブルについたが、周りの女性社員たちはうちの男性陣の隣を狙っているのかチラチラとこちらに視線を送って来る。
このテーブルに座っていられるのも今だけだな、と思った。
「今月もお疲れ様でした!また来月頑張りましょう!かんぱーい!」
商品部の篠原主任の掛け声でみんな乾杯をする。
わたしたちも控え目にグラスを鳴らし、「お疲れ様でしたー」と乾杯をした。
乾杯が終わると、チラホラと女性社員たちがこっちのテーブルへ近付いて来始めた。
主任は爽やかにみんな平等に対応していて、米原くんも愛嬌の良さで仲良さげに話をしている。
直人は相変わらず、話し掛けられても素っ気ない態度を取っていたが、それでもめげずに話し掛けている人がいて凄いと思った。
そんな中、一人でカルピスサワーを飲みながら、なんこつ唐揚げをつまむわたし。
人はたくさん居るのに、孤独を感じた。
少し離れたテーブルでは、沙智子が東さんと一緒に何か話をしているのが見えた。
何処と無く重たい雰囲気で、楽しい話ではないのが伺えた。
居心地が悪くて、わたしは席を立った。
「どこ行く?」
そう話し掛けてきたのは直人だ。
わたしは「ちょっとお手洗い」と答えると、席を離れた。
お手洗いがある方へ向かうと、その脇に長椅子が置いてあり、わたしはそこに腰を掛けた。
楽しそうな会話と誰かの笑い声が響く店内。
一応毎回参加はするけれど、飲み会って何だか苦手だ。
わたしは壁に背をつけ、一つ溜め息をついた。
すると、うちの会社の飲み会が行われている部屋から誰かが出て来た。
お手洗いに行くのだろう。
そう思ったが、わたしの前を通り過ぎる予定の人は、わたしの目の前で足を止めた。
「もしかして、朝永さんですか?」
わたしは顔を上げた。
そこに立っていたのは、見覚えのない男の人だった。
「はい、そうですけど、、、」
「初めまして。俺、最近商品部に入った、岩城陽介です。宜しくお願いします」
黒髪に色白で切れ長の瞳の彼。
この人が新しく商品部に入った人らしい。