不器用なフクロウ
土日の休みが終わり、月曜日。
また一週間が始まる。
わたしはいつもとは違う気持ちで、いつものバスに揺られていた。
休み中にずっと頭にあったのは、月曜日に直人に会ってどう接したらいいのか、ということだった。
いつも通りでいい。
でも、いつも通りに接することが出来るだろうか。
直人はあのことを覚えているだろうか。
そんなことばかり考えていると、いつの間にかエレベーターの中にいて、5階に到着した。
エレベーターを降りて、一番手前の扉がうちの部署のドアだ。
いつもはわたしが先だけど、たまに直人が先に来ていることがある。
今日はどうだろうか。
直人はもう来ているだろうか。
わたしはじんわりと汗が滲む手でドアを開けた。
「おはようございます」
そっとドアを開け中に入ると、そこにはいつも通り主任がいた。
直人のデスクに目をやると、そこに直人の姿はなかった。
主任は「おはよう」と言うと、爽やかににっこりと笑った。
「主任、今日はスッキリとした顔してますね。何かあったんですか?」
わたしはそう言いながら、チラッとドリンクスペースの方を見た。
直人は居ない。
少しホッとする自分がいた。
「うん、離婚が決まったんだ」
「あ、そうなんですね!」
「近々、向こうが家を出て行くことになってる。まぁ、荷物だけあってもう既に居ないみたいなもんなんだけどな」
重たいものから解放されて、主任の表情は晴れ晴れしていた。
「バツイチになったんですね~。でも主任なら、すぐ良い人見つかりますよ」
わたしがそう言うと、主任はハハッと笑い「そんなことないよ」と言った。