不器用なフクロウ


「主任は、どんな感じの人がタイプなんですか?」

わたしはそう言いながら、自分のデスクにバッグを置いた。
主任は「んー」と少し考えたあと「思いやりがあって真っ直ぐで、頑張りすぎて守ってあげたくなるような人かな」と言った。

「随分、具体的ですね」
「うん、そうゆう人が側にいるからな」
「そうなんですか?じゃあ、もうその人にアプローチかけたらいいじゃないですか!」

わたしがそう言うと、主任は少し照れ笑いを浮かべ「その人、モテるんだよなぁ」と言っていた。

わたしはいつものように主任にブラックコーヒーを淹れると、「頑張って下さいね」と言って、それを主任のデスクに置いた。

主任は優しく微笑むと「ありがとう」と言った。

わたしは今日は自分のコーヒーは淹れず、そのまま自分のデスクについた。

今日は各店舗に飾るPOPのデザインを考えなくてはいけない。
過去のデザインを見てみると、去年は直人が作成していた。

直人のくせに可愛い色合いのPOPを作るんだなぁ、と少し笑ってしまった。

すると「おはようございます」と誰かが入ってきた。
その声にドキッとするわたし。

ふと視線を上げると、そこには直人の姿があった。

直人は主任と挨拶を交わすと、自分のデスクへやって来た。
そして、わたしに向けて無表情で「おはよう」と言った。

わたしは平然を装い「おはよ」と返した。

いつもとは少し違うよそよそしい感じ。
直人はあのことを覚えている、そう感じた。

お酒で記憶が飛んでいれば良いのに。
そんな小さな願いを持っていたが、叶わなかったようだ。

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