不器用なフクロウ


目の前に直人がいると思うと、なかなか仕事に集中出来ない。
今までなら、こんなに直人を意識したことがなかったのに、たったあの一瞬の出来事でこんなにもドキドキしてしまうだなんて。

集中出来ずにパソコンの画面を眺めている振りをしていると、画面に「新着メール1件」と表示された。

メール、誰だろう。

わたしは、メールボックスをクリックした。
すると、まだ開封してメールマークの隣に「早坂直人」と表示されていた。

直人からメール。

一瞬、メールを開くことを躊躇してしまったが、わたしはドキドキする気持ちを必死に隠し、メールマークをクリックした。

『昨日はごめん。やっぱり飲み過ぎてたのかもしれない。』

直人からのメールに複雑な気持ちになるわたし。

お酒のせい、自分でもそう思いたかったはずなのに、なぜか寂しくなった。

あれは、ただのお酒のせいだった。
わたしをどう思っているとかではない。

ドキドキしていた自分が馬鹿みたい、と思った。

『大丈夫だよ、気にしないで!』

わたしはそう打ち込むと、直人に返信をした。

そのあと直人からは『ありがとう。』とだけ返ってきた。

もうドキドキする必要はない。
わたしは恥と寂しさを紛らわす為に、デザインを考えることに集中した。

米原くんが出社したとき、「おはようございます!」と明るく挨拶をしてくれたのに、「おはよ」とちょっと素っ気なく言ってしまい、それを後悔している自分がいた。

あとで謝る為にお昼に誘おう。
そう思いながらお昼までパソコンと向き合った。

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