不器用なフクロウ
12時になり、わたしは一旦作業を終わらせた。
ふと横を見ると、米原くんも休憩に行こうと立ち上がろうとしているところだった。
「米原くん」
わたしが呼ぶと、米原くんは驚いた表情でこちらを向いた。
「お昼、一緒に行かない?」
「え、あ、いいですよ!菜月さんから誘ってくれるなんて初めてですね!」
「そうだっけ?」
わたしはバッグを肩にかけ、立ち上がった。
その時、直人の視線を感じたけれど、わたしは気付かない振りをした。
「またあのお店行く?」
「いいですよー!」
にっこりと微笑む米原くんと並び、わたしは部署を出た。
すると、出たところでちょうど岩城さんに会った。
岩城さんはわたしに気付くと、満面の笑みを浮かべ「朝永さん、お疲れ様です!」と言ってくれた。
「お疲れ様です」
「これから休憩ですか?」
「はい、岩城さんも?」
「そうです。ちょっとコンビニまで!今度、俺ともランチしてくださいね」
岩城さんがそう言うと、米原くんはわたしが返事をする前に「はい、菜月さん行きますよー」と言って、わたしの肩を押した。
そして、岩城さんとは別のエレベーターに乗り、1階まで降りた。
「菜月さん、あいつとランチなんか行っちゃダメですよ?」
米原くんのとっておきのお店に向かいながら、米原くんは言った。
わたしは「なんで?」と首を傾げた。
「だって、なんか、菜月さんを取られちゃうのが嫌なので、、、」
「そんな取られるだなんて」
そう言ってわたしがクスッと笑うと、米原くんは恥ずかしそうに微笑んだ。