不器用なフクロウ
第2羽


あれから一週間が経った。
わたしの“岩城さんの付き添い”という仕事が始まった。

岩城さんの担当店舗が決まったらしく、その巡回に行くのだけれど、基本的に巡回は商品部と販売促進部がペアになって行くことが多いのだ。

わたしも今までに、何度か他の商品部の人の付き添いで他の店舗に行ったりしたことがあった。

「すいません、お忙しいのに朝永さんを指名してしまって」

店舗に向かう車の中で、運転しながら岩城さんが言った。

「いえいえ、わたしは大丈夫ですよ」
「でも、早坂さんに凄く睨まれましたけどね」

そう言って、岩城さんは苦笑いを浮かべた。

「あぁ、直人は元々睨んでるような顔してますから!無表情で愛想ないですしね」
「仲良いですよね、早坂さんと。下の名前で呼んでるのって、早坂さんくらいですか?」
「あぁ、そうかもしれないですね。同期なので」
「いいなぁ、早坂さん。俺も朝永さんに下の名前で呼ばれたい、なんて」

岩城さんはそう言って笑うと、ハンドルをギュッと握り直した。

そう言われてみれば、確かに下の名前で呼んでるのは直人くらいだ。
でも、最初から“直人”と呼んでいたわけではない。

いつから、直人を下の名前で呼ぶようになったんだっけ。

ふとそんなことを考えていると、岩城さんの担当店舗である桑園店に到着した。

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