不器用なフクロウ

「戻りました」

ランチを済ませ、部署に戻ると真っ先に米原くんが「おかえりなさい」と言ってくれた。
直人はチラッとこっちを見たけれど、すぐにパソコンへ視線を戻した。

ふと主任のデスクを見ると、そこには主任の姿がなかった。
主任の姿がないことは、珍しいことだ。

「あれ、主任は?」

わたしは自分のデスクにつきながら、米原くんに聞いた。

「さっき部長に呼ばれてから戻って来てないんですよ」
「部長に呼ばれたの?」
「はい、何で呼ばれたのかはわからないですけどね」

部長からの呼び出しだなんて珍しい。
いつも何かある時は課長からのはずだけど、部長だなんて。

すると、部署のドアが開いた。
入って来たのは、主任だった。

けれど、主任の表情がどこか暗いように感じた。
部長に何を言われたのだろう。

主任は、わたしが戻っていることに気付くと「戻ってたのか、おかえり」と微かに笑顔を作って言ってくれた。

わたしは「戻りました」と返したけれど、主任の表情が気になり、素っ気ない感じで言ってしまったかもしれない。

それからの主任は、仕事に集中が出来ていないような感じで時折溜め息をついていた。

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