不器用なフクロウ

「おはようでーす」

気の抜けた声が入って来た。

眉間にシワを寄せ、頭を抱えて姿を現した声の主は、2年後輩の米原優、26歳。
米原くんはアイドルのような可愛らしい容姿を持ち、どこか憎めないところがある。

他の男性社員が嫉妬するほどのモテぶりで、彼を見てきたこの4年の間、彼女が途切れたのを見たことがなく、もちろん社内にも元彼女がたくさんいるのは間違いない。

「痛たたたぁ」

そう言いながら、わたしの右隣のデスクに雪崩れ込む米原くん。
どうやら、また二日酔いのようだ。

「また飲み過ぎたの?」
「昨日は調子に乗りすぎました、、、」

米原くんの言葉に「昨日“も”の間違いじゃないか?」と訂正するように冷たく放つ直人。

わたしは米原くんに「水飲む?」と聞いた。

「菜月さんが入れてくれるものなら、何でも喜んで飲みます」

デスクに寝そべりながらニコッと笑い、米原くんは言う。
そんな彼を見て、「水くらい自分で入れろよ」と直人がボソッと呟いた。

「さっきコーヒー淹れろって言ってたのは、誰だっけなぁ?」

わたしはわざとらしく直人へ向けての独り言を溢すと、水を入れる為にドリンクスペースへと向かった。

「早坂さん、いつも俺に冷たいですよね~」
「そうだな」
「他の女子社員にも冷たいらしいじゃないですか?」
「しつこいからだ」
「でも、菜月さんにだけは優しいですよね」

後ろから聞こえてくる米原くんと直人の会話。

わたしは聞こえていない振りをして、最後に「そんなことない」という直人の言葉を聞き届けてから、振り返って米原くんに入れた水を持ってデスクに戻った。

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