不器用なフクロウ

お昼少し前、直人はデスクワークを終えると「ちょっと出て来ます。休憩済ませてから戻りますので」と主任に了解を取り、出掛けて行った。

直人が外回りに出て行ったときに気付いたのだけれど、いつの間にかわたしの斜め前のデスクに菅野さんが座っていた。

菅野さんはコミュニケーションが苦手で人と話すはほとんどない。

分厚く大きな眼鏡をかけてキノコカットで、地味ではあるけれどある意味で目立っていた。

12時になると、周りの部署から人が出てきて廊下が混雑しているのが見えた。

そんな中、一人の女の人の視線がこっちに向いていることに気付いた。

寂しそうな表情で米原くんを見つめるその人は、商品部の東さんだった。
まだ未練があるようなその表情に、疑問が浮かぶ。

あれ?東さんから別れを切り出したのかと思ったけど、違うのかな?

「菜月さん」

米原くんに呼ばれて、ハッとする。
わたしは「何?」と返事をした。

「そろそろお昼行けそうですか?」
「あ、うん、大丈夫だよ」
「じゃあ、行きましょう」

米原くんは席を立つと、主任に向かって「休憩行って来ます!」と言った。

「主任は休憩行かないんですか?」

わたしがそう言うと、主任は椅子の背もたれに寄りかかり、深く溜め息をついた。

「もうちょっとしたら行くよ」
「ちゃんと休憩取って下さいね。わたしに手伝えることがあれば、指示下さい」
「あぁ、ありがとう。休憩行って来い」

わたしはバッグを持つと「行って来ます」と言い、米原くんと共に会社を出た。

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