二番目でいいなんて、本当は嘘。
「薫のツテで入社したはいいけどさ、あの職場、大っ嫌いなんだよね。だから早く抜け出したかった。そんなときに、あなたと猫の話が出てきて、私にとっては渡りに船だったってわけ」

資料は、10枚ほどにまとめられている。
これだけの企画書を短時間で、しかも、すずがひとりで作ったのだととしたら、この子は相当な能力とスキルの持ち主だということになる。


でももしかしたら――この子はこういうチャンスを待っていたのかもしれない。

ディレクターの木暮さんはともかく、スタッフの櫻井さんや小柳さんは、すずに対して冷たい態度をとっていた。
不真面目な態度をとるのも、残業をしないでさっさとオフィスを出ていくのも、そういう気配を敏感に感じ取っていたからかもしれない。

やっぱり、この子はあなどれない。


そして、桐生社長の動きも早かった。
まるで、すずの考えを知っていたかのように。
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