二番目でいいなんて、本当は嘘。

「おかえりなさいっ！」

勢いよく戸を開けると、桐生社長――薫さんはぱっと表情を崩した。

「ただいま」

けれど、それからすぐに真面目な顔をして私をたしなめた。

「未央さん、玄関を開けるときは、ちゃんと相手を確認してからと言ったでしょう？」
「ごめんなさい。でも、車の音が聞こえたから、絶対に薫さんだと思って」
「車の音でわかったんですか？」
「はい」

薫さんは目を細めて私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
まるで、「仕方ないな」とでも言うように。

私は、飼い主に褒められた犬みたいに、嬉しくなってしまった。

「薫さん以外のときは、用心してます。ちゃんと」

すると180センチ近い長身の彼は、私の頭に手を乗せたまま腰をかがめ、
「そうだといいんですが」
と困ったように笑った。