二番目でいいなんて、本当は嘘。
「アルたん、お出迎えしてくれたんでちゅか~」
「みゃあ」
「ん~、アルたんはやっぱり美人ちゃんでちゅね~」
「みゃあ」
「そうでちゅかあ~」

いい大人が猫に向かって赤ちゃん言葉を使う姿を見て、薫さんは呆れた顔をした。

「猪狩、なんだ、その言葉遣いは……」

仔猫のおなかに顔をうずめてスリスリしていた男性は、はっと我に返ってこっちを見る。
薫さんの秘書にして運転手である、猪狩慎之介だ。
ほっぺたには、白い毛が何本もついている。

「すみません、社長。猫と離れていて、淋しくて淋しくて。でも社長こそ、未央ちゃんの前だとそんなデレた顔をするんですね。薫さん、未央さん、なんて、新婚みたいじゃないですか。このこのっ」

「う……」

今度は、私と薫さんがやり込められる番だった。
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