二番目でいいなんて、本当は嘘。
――そういえば、一紗ともデートらしいデートってしたことがなかったな。
前の会社では、一紗と私が付き合っているということは公然の秘密のようなもので、社内の人たちはみんなふたりの関係を知っていたけれど、一紗は私のことを「彼女」として第三者に紹介したことはなかった。
たまたまふたりで飲みに行ったとき、誰かに会ったとしても、一紗は頑なに「自分たちの関係は、ただの同僚です」とアピールした。
「みんなもう、私たちのことは知ってると思うよ」
「だとしても、俺、公私混同はしたくないから」
そんなふうに言う一紗を、「まじめな人だな」と当時は好ましく思っていたけれど、今ならわかる。
ただ単に、私は一紗が自慢できるような恋人ではなかったということだ。
そして私も、ふたりの関係を公にしないことが、やがては二人のためになると思っていた。
――ただの、都合のいい女だったのに。