二番目でいいなんて、本当は嘘。
「……隠しておくつもりはなかったんです」

観念したように、薫さんは言った。

「私は父に、返しきれない恩があります。仕事は好きにさせてもらっているけれど、桐生の家のことだけは、自分の意志ではどうにもできないんです」


薫さんは、桐生家当主と血のつながりはない。
けれど、桐生家の跡取りとして育ててもらった。

親の罪は子供に受け継がれ、見えない鎖が彼をがんじがらめにしている。

なんて不幸で可哀想な人。
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