二番目でいいなんて、本当は嘘。
事務所の中には小さな応接セットがあり、そこにビジネスバッグを持った男の人が座っていた。
40代くらいの男性で、七三分けの髪に、きっちりしたスーツ姿である。

このあたりの人ではない。
約束の時間よりもだいぶ早いが、彼きっと東京から来た不動産屋だろう。


「お待たせして申し訳ありません」

私はそう言うと、お客様の向かいに座った。

予想していたとおり、彼は東京の不動産屋だった。
家の売買契約の相談に来たのだ。


「てっきり雪が積もっているかと思って向こうを早く出たんですけど、この辺りはもう雪がなくて、早く着きすぎてしまいました。道路脇に雪の壁があるイメージだったんですけどね」
「あ、それは蔵王の方の『雪の回廊』ですね」

山形といってもいろんな地域があり、ゴールデンウィークあたりまで雪の積もっている場所もある。
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