二番目でいいなんて、本当は嘘。
ふたりのあいだに漂う沈黙が気まずいものになりそうなったので、私は慌てて口を開いた。

「あのっ……朝食なら私がご用意します。おじいちゃんの店で賄い作ってたので、料理は得意なんです」

桐生社長のぽかんとした顔を見て、私は小さく付け足す。

「……社長のお口に合うかはわからないですけど」

外資系コンサル会社『UNIX』は、小規模ながら、コアな客層を持つ。
古くから桐生社長と個人的な付き合いをしているクライアントも多く、桐生社長がみずから接待役をすることも少なくない。
祖父の寿司屋の常連客だったのもそのためで、和食を好む外国人客をよく店に連れてきてくれた。

そんなふうに舌の肥えた社長に対して、厚かましく「食事を用意します」と言ってしまうなんて、身の程知らずにもほどがある。

桐生社長はくすりと笑い、「僕の料理こそ、未央さんのお口に合うかわからないですけどね」と言った。

「もう朝食は作り終えるところです。そうですね、未央さんには盛り付けをお願いしましょうか」
「はいっ」
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