二番目でいいなんて、本当は嘘。
「まあ座りなさい」

ご主人は、薫さんを私の斜め向かいに座らせた。
記憶の中にあったのと同じ、甘い香りがふわりと届く。


どうしよう。
薫さんもきっと、私の中に宿る子供の存在に気が付いている。


「未央さん」

薫さんが、私の名前を呼んだ。
以前のように優しく、慈しみの気持ちを込めて。
でも、ほんの少し、困惑も含んで。


「……ごめんなさい」


そのとき、私の緊張は限界を超え、ついに気を失った。
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