二番目でいいなんて、本当は嘘。
社長が用意してくれた朝食のメニューは、目玉焼き、焼きベーコン、ポテトサラダ、ソーセージ、トーストとチーズ。
シンプルなイングリッシュ・ブレックファストだ。

背中側にある備え付けの食器棚から大皿を2枚取り出すと、桐生社長はキッチンのカウンターにそれらを並べた。

「和食のほうが体にいいのはわかっているんですけど、手間のかかる料理は苦手で、つい手抜きになってしまうんですよね」

そういえば桐生社長は、イギリス留学の経験があり、海外生活が長かったと聞いたことがある。
部下に対してもやたらと丁寧な敬語を使うのも、そのせいかもしれない。

私は用意された料理を、2枚の皿に見栄えよく盛り付ける。

「うちも実家が寿司屋ですけど、普段の食事は簡単ですよ。それこそ朝は、パンとコーヒーでおしまい、とか」
「でもおじいさんは和食を好んだでしょう?」
「いえいえ。パンも食べたし、ワインも好きでしたし」
「そういえばお店にも、いろんな国のビールが置かれていましたっけ。クライアントがとても喜んでいました」
「あれはただの、祖父の趣味です。基本的に呑兵衛なんで」

祖父のことを思い出し、ふたりで顔を見合わせて、ふふ、と笑った。
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