二番目でいいなんて、本当は嘘。
「こうして誰かと食卓を囲むのは久しぶりです」

桐生社長は、なんだか楽しそうだ。

もちろん、クライアントや仕事仲間と食事に行くことはあるだろう。
けれどそれはビジネス上の食事であり、〝家庭的な食卓〟とはまったくかけ離れているものだろうと思う。

「そういえば、私もひとりじゃない朝食って久しぶりかも。話し相手がいるのって、いいですね」

ただの同調のつもりだったのに、桐生社長は
「すみません、配慮が足りませんでした」
とすまなそうに私に向かって頭を下げた。

「おじいさんを亡くされたばかりなのに、自分が楽しいからといって、つい浮かれてしまって」

私は右手でフォークを握ったまま、ぶるぶると両手を振った。
その勢いでフォークに刺していたソーセージが飛んでいき、床に転がった。

「す、すみません!」

私は立ちあがり、慌ててソーセージを拾いに行く。そんな私の姿を見て、桐生社長はおかしそうに破顔した。
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